#003 【有料級】スクワットの教科書~上半身編
スクワットは別名”キングオブエクササイズ”とも呼ばれ、一度の動きで数多くの数多くの筋肉が動員されます。それ故に、「ボディメイク」「スポーツパフォーマンス向上」「QOLの改善」「傷害の予防」といったあらゆる目的に対して効果があります。
動きも一見「しゃがんで立つ」だけの単純な動きで誰でも簡単に取り組めることから、これだけ浸透しているのでしょう。
しかし、実際スクワットは想像以上に難しく、奥がとても深いです。パーソナルトレーナー歴10年の私も、今でも新たな発見があります。
今回は少しトレーナー向けになりますが、スクワットについて科学的に解説してきたいと思います。
スクワットで考えること
スクワットには様々なフォームがありますが、大事なことは、「原理原則」を抑えるということ。
それぞれ関節の持つ役割を認識し、より健康的なフォームで行うこと。
関節は大きく
- 可動性関節(Mobility joint)
- 安定性関節(Stability joint)
の二つに分類され、またこれらは身体に交互に位置しています。
この理論は「Joint by Joint Aproach(Theory)」」とも呼ばれ、全ての動作はこの考え方を基に構成されているといっても過言ではありません。
無論、スクワットもこの理論に則ってフォームを作ります。逆に逸脱した場合、「ターゲットとしている筋肉を刺激できない」「出力が低下する」といったトレーニング効果が落ちるばかりか膝や腰等に深刻な傷害を招きます。
例えば腰を痛める場合。「腰部安定性が低い」のは勿論のこと、隣り合う胸椎や股関節の可動性が低いといった原因が考えられます。
またはより遠位の足関節や肩関節から影響を受けている可能性もあるでしょう。
いずれにしても、より健康的で効果の高いスクワットを行うには、このような解剖学的観点が重要と言えます。
では早速、頭部から順にフォームの説明をしていきます。
頭部は必ず身体の中心に
多くの人は姿勢不良から頭部が前に出ています。
頭部が前に出ている状態は下部頚椎の安定性が著しく失われており、胸椎(特に上部)の後弯が強調されます。
胸椎後弯位であると肩甲骨は前傾及び挙上へと引っ張られてしまい、またそれが引き金となり胸椎前弯を作りにくくさせます。
そうなると腰椎を過剰に伸展させようとする代償動作(反り腰)、もしくはそのまま負けて腰椎を屈曲させる動きへと繋がります。こうなるとIAP(腹腔内圧)も高めることもできません。
頭部を体の真上に移動させて下部頚椎の安定性を確保します。
そうすると肩甲骨の後傾及び下制、胸椎の伸展が作りやすくなります。僧帽筋下部線維や菱形筋といった後面筋群や前鋸筋下部線維などが活性されます。当然腰部へのストレスが減りますので、IAPも高めやすくなります。
胸椎伸展、肩甲骨は後傾&下制&内転位に
スクワットは脊椎屈曲方向へと負荷がかかりますので、脊椎の伸展アーチを作っておくことが重要です。
この際に肩甲骨は後傾、下制、内転位にして、より伸展しやすいポジションに作ります。
胸椎と肩甲骨の動きは連動していて、
- 胸椎伸展 ⇆ 肩甲骨後傾、下制
- 胸椎屈曲 ⇆ 肩甲骨前傾、挙上
と一定の連動性が見られます。(その限りではありませんが)
僧帽筋下部線維及び前鋸筋下部線維で肩甲骨後傾及び下制させることで、腰椎伸展筋である脊柱起立筋の負担が軽減されます。つまり腰への負担が減るということです。
またアーチを作ることで、バーベルと腰部との横モーメントアームを短縮させて脊柱への負担を軽減させたり、足部との横モーメントアームが限りなくゼロに近づくことで、発揮エネルギーのベクトルが縦方向へと発揮しやすいといったメリットもあります。
腰部はIAPを最大限高めておく
IAPとはIntra Abdominal Pressureの略で、腹腔内圧のことを指します。
腰部は内臓があることで空洞になっているので空気の圧力を利用して固くさせる必要があります。IAPに関しては呼吸と密接に関係していますので、腹式呼吸で横隔膜を押し下げ、360°腹部を膨らませます。
そうすることでIAPが高まり、腰部ストレスの低下や隣接する股関節や胸椎の可動性の向上を生み出します。
何よりもIAP向上は脊柱を伸展する作用を持つので、スクワットの屈曲ストレス耐性に寄与します。
トレーニングベルトに関して
トレーニングベルトはこのIAPを補助する役割を持ちます。
しかし腹圧の作り方もわからないのにベルトをつけてしまうと、IAP以外の能力が高まり、アンバランスを生み出しますので、一般レベルは基本はベルトなしでトレーニングすることをお薦めします。当ジムでは基本ベルトは付けません。
※当ジムのお客様でベルトなしで100kg以上挙げられる方もいらっしゃいます。
最後に
今回は上半身編。
頭部、胸椎、肩甲骨、腹部について解説しましたが、まだ前半戦です。笑
スクワットは頭から足先まで意識しないといけないことが多く、非常に難しいエクササイズなのです。
逆にこれらが無意識下でできるようになれば、筋力や可動性の向上、呼吸パターンや姿勢改善等あらゆるパフォーマンスアップに繋がるでしょう。
それでは次回は下半身編でお会いしましょう。
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